【ネタバレ注意】川田両悟『アキトはカードを引くようです』(MF文庫J,2019年)

本書*1は,株式会社KADOKAWAの書籍4冊連続刊行企画「スレ発ラノベ4」の最後の1冊として,10月25日に発売された。既に続刊の刊行が決定しており,来月25日に第2巻の発売が予定されている。本作品も例によってやる夫スレ発祥であり,原作は『やる夫はカードを引くようです』である。2014年末から投下が開始され,2019年現在もなお連載中の超長編作品となっている。

書籍化にあたって細かな設定は色々と変更されているようである。書籍化のために必要だったであろう諸々の処理に加え,スレへの投下開始時は短期連載の予定だったようであるから,長期化したことで作者が描きたい内容が変化ないし明確化した結果,それに適合するように改められたのだと考えられる。スレと書籍と両方ともが現行作品であるため,併読する際には読者側で設定を混同してしまわぬよう注意が必要である。

本書の文体は一般的なライトノベルのテイストが踏襲されていると言ってよいのではなかろうか。私はこれまでにあまりライトノベルを読んできた方ではないから詳しいことは言えないが,随所に現代的な用語法が取り入れられており,こなれた文体というわけではないものの,ラノベとして読みやすく仕上げられているように思う。

本作は"AKITO SEEMS TO DRAW A CARD"という英題が付けられている。本作においてカードはガチャから引くので,drawという語の用法に適しているのか一目では疑問であったのだが,英和辞典で確認してみたところ,drawにはくじを引くことやくじで当たりを引き当てる意味も有していると知った。然らば成程良い題である。

イラストはかなり美麗な部類に入ると思う。表紙や口絵におけるカラーイラストの色遣いは繊細であるし,キャラクターの造形も良い。男性,女性,機械と全てがしっかりしているのは凄いことなのではないだろうか。

誤植と思しき部分は1箇所発見している。260ページ16行目の「対して」は「大して」が正規の表記であろう。

*1:川田両悟『アキトはカードを引くようです』(MF文庫J,2019年)。