角田由紀子『性と法律:変わったこと,変えたいこと』(岩波新書,2013年)

本書*1は,性とそれに関連する種々の法律について,主として女性の視点から,どのように規定されているかを眺めているものである。

まず言及しておかねばならないことは,本書が刊行された2013年から現在に至るまでに,本書が前提としている法律の内容に変化が生じているということだ。私が日常生活を送っている中で気付いた法改正として,婚姻適齢は男女とも18歳となることになり,女性の再婚禁止期間は100日に短縮され,強姦罪は強制性交等罪に改められ男女関わらず被害者とされるようになったうえで法定刑の下限が3年から5年に引き上げられ非親告罪化し,児童買春・児童ポルノ禁止法は単純所持も処罰されるようになった。ひょっとすると私が把握していないものが他にもあるかもしれない。約6年の間に状況はめまぐるしく変わっている。だからといって本書の内容が読むに堪えなくなったなどということではなく,読む際の注意点として読者側が情報のアップデートに留意する必要があるということである。

本書は,両性に関わる法律によっていかなる問題が生じているのかを6つの面で指摘しており,法の規定が実務においてどのように反映されているのか,実体験も交えた説明がなされている。著者の持つ問題意識には成程と思わせられる部分も多々あったのだが,憶測を基にした記述も多く見受けられた。また,構造的に読みづらい文章や,何のためにその場所に置かれたのか捉えがたい文章も散見された。

実務の当事者視点での問題意識を把握するには有用であると思われるが,実証的調査・研究や立法趣旨の解説書などとの併読が必要かもしれない。

*1:角田由紀子『性と法律:変わったこと,変えたいこと』(岩波新書,2013年)。