宇野重規『保守主義とは何か〔第3版〕』(中公新書,2017年)

私が『保守主義とは何か』*1を手に取った直接的な理由が何かあったはずなのだが,あいにくと何年か前のことなのでよく覚えていない。従前より私にとって保守というのは何となく漠然とした言葉で,きちんとした意義を知らないままに雰囲気で使っている言葉であった。しからば保守の持つ言葉の意味を軽くでも学んでみる必要があろうと思って過ごしているところに本書と出合ったのは覚えている。

本書を読むに,どうやら保守の出発はイギリスのエドマンド・バークという18世紀の政治家であり,その含意するところは「①保守すべきは具体的な制度や慣習であり,②そのような制度や慣習は歴史のなかで培われたものであることを忘れてはならず,さらに,③大切のなのは自由を維持することであり,④民主化を前提にしつつ,秩序ある漸進的改革が目指される」*2ということであるらしい。その保守主義がイギリス内部でフランス革命社会主義と戦い,アメリカに継承され大きな政府と戦ったという流れがあり,では日本ではどう継受されたかと言えば結局バークに立ち戻った理念のある保守思想は根付いていなかったようである。

日本に蔓延った状況即応的保守風の考え方は,なんとなく政治だけでなく日本人の生活の中に根差した日本の風土とでもいうべきもののようにも思える。最近はそうでもなくなったが,反対のための反対としか思えないことが漫然と繰り返される光景は幾度となく目にしてきた。

本書を読みつつそんなことも考えていたわけだが,とまれ保守について語るときには,ひとまず『保守主義とは何か』は読みましたよ,と言えるようにはなったのである。新書一冊で深く語り得るべくもないから,気が向けば巻末の豊富な参考文献から適当にピックアップして読んでみたい。

*1:宇野重規保守主義とは何か〔第3版〕』(中公新書,2017年)。

*2:宇野・前掲注(1)13頁。