倉下忠憲『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』(星海社新書,2019年)

Twitterで目にして気になり,書籍のまとめ買いのついでに購入したのが『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』*1だった。

ネットでのレビューを見てみると,実用書というよりは哲学書であるとか,具体性に乏しいとか,あるいは既にタスク管理をある程度学んだ者でないと使用に耐えないなどという評価が散見された。私はこのような自己啓発書(と言っていいのか?)やタスク管理本を手にするのは初めてだったから,本書を他の類型書との比較することはできないが,本書の記述や他の読者レビューからすれば,恐らく他のタスク管理本は細やかな方法論が逐一丁寧に説明されているのであろうと推察される。それからすると本書は恐らくそれらの本とは性質が異なるのであろう。

本書はタスク管理に必要な概念を説明しながら,様々な手法を紹介している。それは著者が,万人に合う画一的な唯一正解のタスク管理法などは存在せず,タスク管理の様々な考え方を自分の現状に合う形に日々自分自身でカスタマイズして使いこなしていく必要があると考えているからである。そうであるがゆえに,この状況にある人間はこの方法が最適である,などという説明はせず,この方法はこのような人間に合う蓋然性が高いというような若干抽象的な紹介をするにとどめているのである。

私は筆者の考えに共感する部分が大きいため,本書に紹介されるタスク管理法を辞書的に利用できるだろうと考えている。ごちゃごちゃと余計なことは考えず,与えられる方法を一心に取り組みたいという方には本書はあまり合わないか,あるいは本書を読んで気になった方法を解説する別の書を手に取るための足掛かりとして活用するのがいいのかもしれない。

途中途中に挟まれる比喩表現には時折首を捻らざるを得ないものも多々あったが,それに目を瞑ればある程度充実した内容の書だったのではないかと思う。

*1:倉下忠憲『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』(星海社新書,2019年)。