「星屑桜」がおもしろい

トーチというリイド社運営のweb漫画サイトがあり,私もいくつかの作品を楽しませてもらっている。先頃久々にサイトにアクセスしたところ,不吉霊二の「あばよ ~ベイビーイッツユー~」という漫画が更新されていた。第1話しか掲載されていなかったときにたまたま見かけ,現在は第6話まで更新されている。

「あばよ ~ベイビーイッツユー~」は,観念的というか抽象的というか,私にはまだ理解することがなかなか難しい表現で描かれており,にもかかわらずどことなくノスタルジックな感傷を思い起こさせてくれる。「星屑桜」はその第5話である。

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人生は経験の連続であり,その中で自分の記憶に残る経験/残らない経験が否応なく区別されている。意識的に忘れないようにしている出来事もあれば,いつの間にか記憶の片隅から消え去ってしまっている体験もあるだろう。日常のなんてことのない風景が,ずっと頭の中に澱として沈んでいて,ふとした瞬間鮮明に蘇るなんてこともよくある。

少し前に忘れずに忘れるために書くというようなエントリを書いたが,この感情とこの「星屑桜」の話はだいぶ重なるところがあるように感じている。言ってしまえば全く毒にも薬にもならない,ただの生活の一コマのような経験であっても,なんとなく心のどこかに引っかかるものがあって,でもやはりその経験はそれだけだとちっぽけなものだから,意識しなければいつの間にか記憶から抜け落ちてしまう。忘れまいと思っても,次々と舞い込んでくる新たな覚えておきたいこと/覚えておきたくないことの連続の中で,その記憶を大事にしておくためには,覚えているうちに,あるいは忘れてしまってもふと思い出したときにすかさず,記録に留めておくことが必要になるのではないだろうか。