退位か譲位か

あと半月もしないうちに平成の世が終わる。今月の頭には次の元号が令和であると発表されたこともまだまだ記憶に新しい。

此度の改元今上天皇陛下が御位を御退きになることが発端である。今上天皇陛下のお気持ち表明前後から,これを退位と呼ぶか上位と呼ぶかが盛んに議論されていた。

これは今上天皇陛下が天皇の地位から御退きになることに着目するか,それとも皇太子殿下に位を御譲りになることに着目するかの違いであると思われるが,どちらが正確な(正しい)行為の名称であるかについて,過剰に感情的な論争が繰り広げられていたこともあった。どちらの使用が良い悪いというわけでもなく,その意味するところはどちらでも理解できるように思うが,天皇の権能としてその位を他の者に譲ることができると言えるのか私には疑問である。

皇室典範第4条の規定によれば,現に天皇に即位している者が崩御したときは,皇嗣が直ちに天皇に即位することになっている。そして皇嗣皇室典範第1条から第3条までの規定に従いシステマティックに決定されるものである。

今般制定された天皇の退位等に関する皇室典範特例法は,皇室典範第4条の特例として定められており(第1条),第2条において,施行日に天皇が退位し,皇嗣が直ちに即位することと定められている。

これらが現実に行われた際に生ずる現象の実態としては,今上天皇陛下が皇太子殿下に天皇の位を御譲りになると見ることはできるものの,制度的に見れば今上天皇陛下が皇太子殿下を指名して天皇の位を御譲りになるわけではなく,今上天皇陛下が退位されることで,制度上皇嗣であられる皇太子殿下が制度上そのまま即位されるということになるのではないだろうか。

結局のところ,退位であれ譲位であれ,どちらかが一方的に間違っているというわけでもないであろうし,各人の政治的あるいは思想的信条からどちらを使うか決めている者もいるだろうから,目くじらを立てずに他人の語句の使用を許容してよいのではないか。

 

本日は20分オーバーである。制度面に言及する以上,ある程度正確性を担保したいとは思ったけれど,それで時間を超過するのは目的から外れてしまうので,次回更新は時間を厳守したい。

なお,次回更新日は未定。少なくとも明日ではない。