【ネタバレ注意】『モンスターハンター』

本稿は本日(2021年3月26日)日本公開の映画『モンスターハンター』のネタバレを含む感想記事である。同日に発売されたNintendo Switch用ソフト『モンスターハンターライズ』とは全く関係ないため、注意されたし。

 

最初に注意が必要かと思われるのは、本作は多少のグロテスクな表現を含むということだ。一応、映倫の公開区分は「G」、つまり一般向けで年齢制限はないが、ぎりぎり人の原形を保った焼死体や、人がモンスターの角や針に貫かれたり、『ジュラシックパーク』よろしくパクリと食べられてしまう描写は普通にある。出血が極端でないというだけに見えたので、それらの表現が苦手な方にはお勧めしない。

 

私は暫く前に、試写会に行ってきたが映画モンハンを観に行ってはならないという注意喚起のツイートが回ってきたのを見ていた。今回それでも観に行ったのは、ツイート投稿者との感性が残念ながら正反対であることに一縷の望みをかけ、そうでなくとも堂々と作品に文句を言う身分を手に入れるためであったと言っても過言ではない。結果は、残念だった。

ちなみに私が得ていた事前情報は、アメリカの軍人(?)ミラ・ジョヴォヴィッチモンスターハンターの世界に転移してしまう、という程度だった。

 

主な不満点は、中盤までの展開である。上映開始から1時間程度までを指しているが、本編時間104分らしいので、ほとんど半分と言っていいだろう。アルテミスがネルスキュラの巣を脱出してからは、専らハンターと諍い合うのみで、モンスターを中心とした描写を望んでいた私からすると、肩透かしを食らった気分になった。

敷衍して言えば、モンスターハンター世界の世界観がいまいち見えてこなかったのである。何故ディアブロスがあの砂漠に居座り、人間を攻撃し続けるのかであるとか、何故リオレウスが不死身で、天廊の守護者と言う存在になっているのか、何故リオレウスを倒すと今度は天廊からゴア・マガラが出てきたのかなど、何故そのピースをそこに嵌めたのか、理解が難しかった。原作ゲームにあったような(と言っても昔のモンハンしかプレイしていないため、最近のものについては良く分からないが)、モンスターの生態系やハンター達を含む人間の社会、文化に関する豊富な情報が殆ど見えてこず、逆に映画である本作がゲーム的にモンスターを目的ありきで配置していったように見えた。世界観を掘り下げるには、現実世界と現地との言葉の壁を超えさせるのが難しかったのかも知れないが、しかし結局英語が分かる現地人は登場できているので、もっと世界観に深みを持たせて欲しかったと思う。天廊に古代文明の遺物という設定を与えたは興味深かったが、もう一歩踏み込んだを是非見せて欲しかった。

 

逆に良かった点は、ネルスキュラとアイルー以外のモンスターの造形で、これはほとんど文句がなかった。ネルスキュラはあまり討伐経験がないため造形を細かく覚えていなかったのもあるが、全体的に黒っぽくてかなり現実の蠍か蜘蛛に近く、アクラ・ヴァシムっぽさもあり、作中で説明されるまで正体が分からなかった。アイルーに関しては、言っては悪いが気持ち悪かった。最近のアイルーはあんな感じなのだろうか?

また、最初の砂上船のシーンでの山崎紘菜の演技は「モンスターハンター」として非常に素晴らしく、ゲームのOPムービーと遜色ないモンハン世界の住人に見えた。

 

私のように幅広い豊かなモンハンワールドの世界観を期待されている方には、本作はあまりお勧めできないのではないと思う。パニックアクションがお好みなら止めはしない。