『オーバーロードⅢ』第6話の「歌う林檎亭」

「歌う林檎亭」は,バハルス帝国のワーカーチームであるフォーサイトが根城にしている宿屋である*1。転移後の世界は転移前の世界と異なる文字を使用しているようであり,アニメでも架空文字で表現されている。アニメ第3期第6話の12分38秒辺りに「歌う林檎亭」の看板が描写され,ここでも当然作中の架空文字の使用を見ることができる。

私はこのシーンを見ているときに漠然と「歌う林檎って英語だとsinging appleだよなあ」などと考えていたのだが,その考えを頭に浮かべたまま看板の文字を見れば,その文字の形と文字数から,どうも中央に「apple」と書いてあるように見えた。この看板は文字の区切り方からどうやら3単語で記されているように思えたため,appleと思しき部分の直前,三分割の最初の部分がsingingと読めないか解読を試みれば,まず文字数が七文字であり,次に二文字目と五文字目,三文字目と六文字目,四文字目と七文字目がそれぞれ同一の架空文字で記されていることが分かったため,おそらくこの部分がsingingであるという予想は正しいものであると思われた。残る未解読部分は三分割の最後のパートの6文字からなる部分である。この部分では,既にsinging appleに使われている文字と同じ文字が3か所で使われており,未知の文字を「_」で示せば「_a_e_n」になると予想できた。ここまでの解読作業は,アニメで用いられている架空文字は英語を基にアルファベットを別の表記で置き換えているものであるという推測の下に行っており,その前提で行けば未解読部分はsinging appleに使われておらず,かつ互いに異なる3つのアルファベットであると分かった。要は「aegilnps」の8種以外の18種類「bcdfhjkmoqrtuvwxyz」の中の3つである。あとは「_a_e_n」の空欄に異なる3つのアルファベットを放り込んでそれっぽい単語ができるものが正解だろうという予想がついた。P(18, 3)=4896であるらしいので,約5000通り全て書き出せばどこかに正解はあることにはなるのだろうが,流石にそんなことはやってられないので後ろの空欄から一箇所ずつ後方一致で辞書検索をかけていった結果「tavern」という単語に辿り着いた。酒場や宿屋を指す古めの英単語らしいということであり,おそらくこれが正解であろう。

そういうわけで「歌う林檎亭」は「singing apple tavern」と表記されることが分かった。この3単語から,バハルス帝国で使われている文字のうち「aegilnprstv」の11種類の字形が判明したことになる。残るは「bcdfhjkmoquwxyz」の15種類ということになるが,他の架空文字の描写があれば今回判明した字形と組み合わせることでこれらも解読することができるのではないかと思われる。

*1:アニメ『オーバーロードⅢ』第6話11分21秒辺り,丸山くがねオーバーロード 7 大墳墓の侵入者』45-46頁。