2024-01-01から1年間の記事一覧

西林克彦『わかったつもり:読解力がつかない本当の原因』(光文社新書、2005年)

センター現代文の解答で行う操作は、論理的類推・解釈可能性・妄想の三つだと、予備校の授業でむかし教わった。論理的類推は本文に書いてあることから直接導ける内容で、適切な選択肢の最適な候補だということは覚えているのだが、解釈可能性と妄想のところ…

着せ恋実写ドラマ化に思うこと

「刻央が前作の アニメにキレてた 理由の一つが」 「キャラの感情や 意図を理解されて なかったからだ」 「理解されないまま それを広げられて 盛り上げようと されても 茶化されてる のと同じだ」 「必死に 積み上げてきた ものを公の場で 潰されて」 「腹…

宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社、2023年)感想

ブクログの2024年7月開催「#元気が出る!3選」なるブックリスト特別企画の結果紹介ページ*1のトップに本作が紹介されていたので、本作を読んで元気が出なかった側の意見もここに一つ残しておこうかと思う。 独特な感性を持つ少女・成瀬あかりの、だいたい中…

【ネタバレ注意】かまど=みくのしん『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む:走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚』(大和書房、2024年)感想

かまど=みくのしん、と書くと、かまどとみくのしんが同一人物のように見えてしまうが、わたしが倣っている流儀では、日本語で共著者二名を併記する手法がこれだから仕方がない。 最近流行の一般名詞をそのまま筆名としているような著作の、しかもそれが二名…

【ネタバレ注意】桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet〔40版〕』(角川文庫、2023年)

初出は2004年に刊行された小説で、それから20年ほど経過しているが、そのときのレーベルが富士見ミステリー文庫とミステリに分類されそうだったため、一応、ネタバレ注意の看板を出している。ジャンルとは初出時のレーベルであるという言説は、私の観測範囲…

【感想】岩尾俊兵『世界は経営でできている』(講談社現代新書、2024年)

世界は慶應でできている:文学によって語られる必要がある 本書は冷笑体エッセイである*1。 経営学の専門家による著書だが、エッセイであるからして、専門的理論的な高度緻密の学術議論が展開されるわけではない。経営的な視点から世界を冷めた目で見てちょ…

【感想】三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書、2024年)

結論に同意するところは少なくないが、理由付けには飲み込めなかった部分もある。 社会学者の牧野智和の論を引くところに始まり、読書とはノイズの提示を受けることであると本書はいう*1。ノイズとは「偶然性」でありまた「他者や歴史や社会の文脈」であって…