齋藤孝『読書力』(岩波新書,2001年)

本書*1は,日本人に読書力の涵養を訴える本である。著者の齋藤孝は,Eテレにほんごであそぼ』の総合指導や著書『声に出して読みたい日本語』などで知られる。

私が先日来読書への動機付けに飢えていることは既に他の記事で言及した通りだが,その欲求は本書によってかなりの程度,軽減ないし改善されたように感じた。

本書は読書それ自体が一つの技であって,上達を望むためには練習が必須であると述べている*2。この記述によって私の心の負担は大分軽くなった。すなわち,本を読む能力は必ずしも自然と身に付いたり,生得的に獲得していたりするものではなく,修練によって後天的に習得可能な技術であると明示されたため,それであれば今から正しく修練すれば読書力の獲得が可能であるという希望が顕在化したのである。また,ここで言われる読書力とは,「精神の緊張を伴う読書」を日常の習慣としてこなすことのできる力だと説明される*3。この読書力の定義も,自己啓発書や娯楽小説(もっとも,純文学と娯楽小説との違いが私には未だ良く理解できていないが)等の柔らかい文章ではなく,硬派な文庫や新書等の硬めの文章を読みこなす能力を欲していた私にとり,非常に有用なものであると感じた。

そして本書の示す練習方法は,一つの大きな基準として4年間あるいはそれ以内に文庫本を100冊こなし,それに続いて新書を50冊こなすというものだ*4。文庫100冊が基準となっているのは,筆者の経験として読書の技としての質的変化が生じるのが100冊単位であるからだという。なお,本を読んだことの基準は該当書物の要約が可能であることとされている*5。この点,私は文庫をほとんど通らずに新書を読み始めていたため,まずは文庫を読むところから改めて修練を始めたい。

その他,具体的な読書の上達法として音読や三色ボールペンを用いた線引きなどの技術指導も記されているが,個別の技術は適宜導入するとして,主目的たる読書力の獲得に向け,4年以内の文庫100冊読破を目標に修練を積むことにする。

*1:齋藤孝『読書力』(岩波新書,2001年)。

*2:齋藤・前掲注(1)6頁。

*3:齋藤・前掲注(1)9頁。

*4:齋藤・前掲注(1)26-27頁。

*5:齋藤・前掲注(1)18頁。